上司

今日の研修出張はホテルが会場で、受付９時４５分～、開会１０時１５分で、９時には会場に到着。
とりあえず、会場のある２階のロビーへ上がってみると、階段近くのソファで後輩Ｎくんが本を読んでいた。

Ｐ「おはよ～う。」
Ｎ「おはようございます。早いですね。」
Ｐ「思ったより早く着いたんよ。そっちこそ、早いじゃん。」
Ｎ「同じく、早く着いちゃいました。」

会場も受付も準備中だったようで、しばらく話しながら時間が来るのを待っていると、今日の研修会の主催団体のＮ会長さんが来られた。

Ｐ「おはようございます、今日はお世話になります。」
会長「おぉ、Patiちゃん、おはよう！なんか、会う度、綺麗になるなぁ。」
Ｐ「まあ！ありがとうございます♪」
会長「今日は報告発表かなんか、担当してくれるんかな？」
Ｐ「いえ、今日はお役御免で。純粋に参加者です。」
会長「そうか。じゃあ、しっかり勉強して帰ってください。」
Ｐ「はーい♪」



Ｎ「どなたですか？」
Ｐ「今日の主催者の会長さんよ。」
Ｎ「やっぱり、Patissierさんは顔が広いですね。」
Ｐ「違うのよ、Ｎ会長さんは、私が新採用のときの次長さんなの。めちゃくちゃお世話になったんよ。それにＮくんは１年目だから解らないだろうけど、この世界はすごく狭いから、すぐ覚えるよ。」
Ｎ「はは、狭いんですか。」
Ｐ「狭い、狭い。Ｎくんの去年までの部署とは、比べものにならないくらい狭いよ（笑）」
Ｎ「そうなんですか。でも、やっぱり会長さんくらい言えないと、ダメなんでしょうかねぇ。」
Ｐ「え？」
Ｎ「『会う度に綺麗になるなぁ』って、なかなか言えないですよ。」
Ｐ「あー、気にしなくていい。あの方のリップサービスは一流だから。まあ、身につけてて損はないかも…だけど（笑）」



Ｎ会長さんとは新採用から２年間、一緒に勤めたのだが、とても優しくお茶目な方だった。
私と血液型と干支が同じと知って、「えぇ！僕とPatiちゃん一回りも違うんか。歳をとったハズだなぁ！」と言っていたが、本当は二回り違っていた（爆）

何より、何も仕事が解らない私に一から十まで指導してくださった方で、私はＮ会長さんが大好きだった。
２年が経つ頃、Ｎ会長さんの栄転が決まったときに、私は悲しくて寂しくて、『次長さん、転勤しないでください～』としがみついて、数時間泣きじゃくった。（このことは、後で先輩に叱られた…。）

後にも先にも、あんなに別れが辛かった上司は、Ｎ会長さんだけだ。


仕事を続けていたら、いつか私も、あんな上司になれるかな。
なりたいな。なれるといいな。